理事長挨拶

一般社団法人 日本産科麻酔学会

理事長 照井 克生

理事長就任のご挨拶

一般社団法人日本産科麻酔学会の理事長に2021年1月に就任いたしました照井克生と申します。副理事長は亀井良政先生です。本学会と私自身について簡単にご紹介し、本学会が目指すものをお伝えしたく存じます。

私は大学卒業の翌年に、米国で麻酔科医として臨床研修する機会を得ました。その間の産科麻酔研修では、分娩フロアに麻酔科医が24時間常駐して、突発する緊急帝王切開に迅速に対応し、昼夜を問わず無痛分娩を提供している様子を目にしました。産後の予想外の出血や急変にもすぐに対応できます。今から30年も前のことです。そして何よりも、お産の瞬間にお母さんやご家族と喜びを分かち合える経験は、何物にも代えがたいものでした。そのような診療を日本でも実現したいと思って帰国し、出会ったのが本学会の前身である「分娩と麻酔研究会」でした。1961年に「無痛分娩研究会」として発足し、1993年に「分娩と麻酔研究会」に改称するところでした。

「分娩と麻酔研究会」に参加して驚いたのは、お産の痛みを和らげることが大切だと考える産科の先生方が多く集まり、麻酔科医と共に真剣に議論している姿でした。日本の各地で無痛分娩を提供しようと孤軍奮闘されている産科の先生方にもお会いしました。現場での産痛緩和や帝王切開術の麻酔はこれまで産科医が担ってきた部分が大きかったためか、本学会の会長は長く産科の先生方が務めてこられました。このたび私は麻酔科医として初めて理事長を拝命し、大変光栄に存じますとともに、その責務に身が引き締まる思いです。

産科麻酔の領域は、無痛分娩や帝王切開などの出産時に限定されるものではなく、不妊治療の際の麻酔や、胎児の検査や治療のための胎児麻酔、妊娠中の各種手術の麻酔、そして合併症をもつ妊婦の全身管理と急変対応なども含まれます。そこで「分娩と麻酔研究会」は、2009年に「日本産科麻酔学会」へと成長しました。2019年には海野信也前理事長のリーダーシップにより一般社団法人となりました。組織を変革し、より開かれた学会として、これからの発展への基盤を固めているところです。

本学会の使命は、「産科麻酔及び周産期医学に関連する基礎・臨床研究発表、会員相互の知識の交換、国内外の関連学会との連携協力を通じて産科麻酔学、周産期医学の進歩普及を図り、もって周産期医療の発展と質の向上に寄与すること」です。無痛分娩による不幸な事故を防ぐことは、本学会の重要な使命です。それは麻酔科医と産科医と助産師とが力を合わせることなしには達成できませんし、無痛分娩に対する新生児科医の理解も重要です。救命救急医や集中治療医との連携・協力も、様々な原因で発生する母体死亡をさらに減らすために必要です。本学会の活動に関心を抱かれた皆様のご参加を、ぜひお願い申し上げます。