医療従事者の方へ
医療従事者の方々に知っていただくための指針・ガイドライン・提言などをまとめました。
産科救急
分娩時や分娩後の大量出血への対応をフローチャートで解説しています。定期的に更新され最新の2022年版は2021年 に産科危機的出血に伴う後天性低フィブリノゲン血症に対するフィブリノゲン製剤の使用が保険適用となり改訂されました。
母体集中治療管理の総論(気道・呼吸・循環器・精神ケア・胎児管理など)について、ポイントがまとめられています。
母体に特有な疾患(産科出血、敗血症、妊娠高血圧症候群など)の集中治療管理について述べられています。
妊婦の特性に配慮した蘇生ガイドライン。BLS/ALSをフローチャートで示しています。子宮左方移動、死戦期帝王切開、局所麻酔薬中毒、高マグネシウム血症などへの対応が盛り込まれました。
母体の敗血症診療に関する7つの推奨を解説しています。
安全
- Risk of medication errors with tranexamic acid injection resulting in inadvertent intrathecal injection(2022)
- Tranexamic acid at cesarean delivery: drug-error deaths(2022)
- トラネキサム酸注射剤の誤投与に関する注意喚起について(2022)
- Catastrophic drug errors involving tranexamic acid administered during spinal anaesthesia(2019)
トラネキサム酸は近年のエビデンスの蓄積により、出血量の低減を目的として周産期、周術期に広く使用されるようになりました。経静脈的な全身投与では副作用も少なく比較的安全に使用できことがわかってきていますが、脊髄くも膜下麻酔などの際の中枢神経周囲への直接投与(誤投与)では重篤な副作用を起こし、致死的な転帰となる場合も少なくないようです。このようなリスクもあることを認識された上で安全な薬剤の取り扱いを心がけていただきたいと思います。
血小板減少妊婦は12%存在します。脊髄幹麻酔の際に最低限必要な血小板数について、7万/µL以上あれば硬膜外血腫のリスクが低いと示しています。本コンセンサスと代替手段のリスクも含めて患者に説明する必要があります。
このガイドラインでは、全身麻酔や鎮静を受ける授乳婦の母乳育児を適切にサポートするために麻酔科医が必要な知識が詳細に述べられています。麻酔に使用する薬剤に関する薬物動態データも記載されています。
帝王切開で使用した脊髄幹モルヒネに伴う呼吸抑制の予防と検知のためのモニタリング方法を示しています。管理方法を患者のリスクとモルヒネの投与量で分類しており実践的なものとなっています。
産科麻酔領域で用いられる薬剤の実践的な使用方法について、医学的根拠に基づいて記述されている。添付文書の記載を超えた内容です。
局所麻酔薬を使用する全ての医療従事者を対象に局所麻酔薬中毒の予防、診断、治療について示されています。末尾にチェックリストが付され、実践的なパニックカードとして使用できます。
米国麻酔科学会と米国区域麻酔学会が発表した脊髄幹オピオイドを投与した患者の呼吸抑制の予防と検知、管理のための診療ガイドラインです。2009年に発表され、2016年に最新版が公開されました。
妊娠・分娩は深部静脈血栓症のリスクを高め、帝王切開でさらに高まるため抗血栓療法は珍しくありません。NSAIDsは脊髄幹麻酔の禁忌となりませんが、他の抗血小板薬・抗凝固薬は一定期間休薬が必要になり、併用症例では禁忌となります。
困難気道ガイドラインは世界の多くの学会が作成していますが、産科領域のガイドラインはわずかです。英国のガイドラインはその中でも世界の広い地域で参照されています。
日本では母体死亡の全例について個々に詳細な調査が行われています。その過程で得られた課題や改善策がまとめられたものが本提言です。年に1回発刊されています。
日本医療機能評価機構は医療の質の向上と信頼できる医療の確保に関する事業を行っている団体です。全国の登録施設から収集したヒヤリハットを分析し、繰り返し発生している事例や重大な事例を紹介し、発生した医療機関による取り組みとそのポイントを解説しています。
麻酔機器、器具、薬剤に関連したトラブルなどの情報集です。産科麻酔に関連した情報も含まれています。
APSFは麻酔の安全性を向上するための活動をする米国の団体です。これまでに産科麻酔のトピックスも取り上げられています。2017年から日本麻酔科学会がAPSFと提携し、ニュースレターの一部を日本語化しています。
医療品質
近年、帝王切開における術後回復力強化(ERAC)プログラムが注目されています。このガイドラインでは、母体の術後回復、有害事象の減少、母児の愛着形成の促進に焦点を当てて、科学的根拠に基づいた周術期の管理方法を示しています。
ASAが発表した硬膜穿刺後頭痛(PDPH)管理についてのステートメント。妊産褥婦を対象に、PDPHの診断や治療の選択、EBPの実際の方法や副作用、その後のフォローについてエビデンスに基づいた内容となっています。
硬膜外血腫や膿瘍などの重篤な神経障害の予後を改善するための麻酔中から麻酔後のモニタリングや対処について述べられています。
帝王切開時の分娩後出血予防のための子宮収縮薬の投与方法に特化した初めてのガイドラインです。このガイドラインでは効果的かつ副作用の少ない科学的根拠に基づいたオキシトシンの投与方法が示されています。
帝王切開の脊麻後低血圧は、母体の嘔気嘔吐や胎児の状態の悪化を来すため、適切な対策が必要です。このガイドラインでは、脊麻後低血圧の機序、目標血圧、昇圧薬の選択および投与方法について詳細に解説されています。
- ACOG/ERASガイドライン① 妊娠中・術前:前投薬・絶食・炭水化物補給(2018)
- ACOG/ERASガイドライン② 帝王切開の術中:抗生剤・消毒、麻酔管理、低体温予防、手術手技など(2018)
- ACOG/ERASガイドライン③ 帝王切開の術後:嘔気・嘔吐管理、鎮痛薬、食事、早期離床など(2018)
帝王切開におけるERAS(術後回復強化プログラム)について、主に母体に焦点を当てエビデンスに基づき推奨しています。
新型コロナウィルス(COVID-19)感染症 医療従事者向けの情報
新型コロナウイルス(COVID-19)に関する情報をお知らせ致します。 なお、これらの情報は医療従事者向けの情報 です。医療従事者の皆様は、貴施設の実情に合わせて、関連各部署と協⼒して適⽤してください。
出典: Management of pregnant women with known or suspected COVID-19
- COVID19感染患者(疑い症例を含む)の帝王切開術における⿇酔管理について(2020年4月)
COVID19感染患者の⿇酔法選択は、⾮感染者と同様です.COVID19感染のみを理由に全⾝⿇酔を選択することに、明確な科学的根拠はありません.本学会では、これまでのCOVID19感染妊婦に関する報告・諸外国の提⾔から、脊髄くも膜下⿇酔・硬膜外⿇酔(以下、脊髄幹⿇酔と記す)は禁忌とは考えられていないこと、気管挿管時と抜管時にエアロゾル拡散による医療従事者の感染リスクが⾼まることから、脊髄幹⿇酔を推奨します。全⾝⿇酔の適応は、通常の臨床と同じであり、全⾝状態の悪化が懸念される場合は全⾝⿇酔も考慮してください。全⾝⿇酔を実施する際には各施設の基準に準じて,医療従事者への感染を防ぐ最⼤限の努⼒をしてください。
AAGBI: Association of Anaesthetists of Great Britain and Ireland(英国・アイルランド麻酔科医協会), ACOG: The American College of Obstetricians and Gynecologists(米国産科婦人科学会), ASA: American Society of Anesthesiologists(米国麻酔科学会), APSF: Anesthesia Patient Safety Foundation(麻酔患者安全財団), DAS: Difficult Aiwray Society(困難気道学会), JRC: Japan Resuscitation Council(日本蘇生協議会), JSA: Japanese Society of Anesthesiologists(日本麻酔科学会), JSPC: Japan Society of Pain Clinicians(日本ペインクリニック学会), JSRA: Japanese Soceity of Regional Anesthesia(日本区域麻酔学会), OAA: Obstetric Anaesthetists’ Association(英国産科麻酔学会), SMFM: Society for Maternal-Fetal Medicine(米国母体胎児医学会), SOAP: Society for Obstetric Anesthesia and Perinatology(米国産科麻酔学会)